No.57 タイのトランスジェンダー事情(1) 


 2003年春、タイのトランスジェンダーの状況を見てきました。あまりにも多くのことを知り学び、日本とのちがいに驚いたものでした。
 報告したい多くのことがあります。一挙に掲載できる余裕がないため、少しずつ載せていきたいと思います。

期待をふくらませて、Thailandへ

 2003年春、成田を飛び立ち、6時間で、タイのバンコク国際空港であるドンムアン空港に到着した。飛行時間はおおよそ6時間であるが、時差の関係で、表面上は、日本時の出発時刻からは4時間しかたっていない。
 今回のタイ旅行の目的は、タイのトランスジェンダーにできるだけ会い、その状況を知ることと、タイの一般の人がトランスジェンダーをどのように受け入れているかを知ることで、日本とタイとの文化のちがいを知ることにあった。タイはニューハーフが多いとか、性転換手術が数多く行われている、というような話は聞いていた。しかし、一般の社会の中で、ショービジネスやホステスではない仕事として、彼女たちが受け入れられているかどうかということについては、日本ではその情報を聞く機会はなかった。「実態はどうなのだろう」という期待に胸をふくらませて、バンコク国際空港に向かったのだった。
 今回のタイでの、当事者との交流には、タイで何百例と手術を手がけてきたSRS(性転換手術)をかかげる病院の秘書の女性がコーディネートしてくれることになっている。自分の病院で手術を受け、各方面で働いているトランスジェンダーと会うことができるらしいということだった。

 たぶん偶然ではあると思うのだが、ひょっとしたら、タイ行きの飛行機に乗ったことで、それは必然なのかもしれないことが機内であった。
 私の前の座席に座っていた2人連れの人が、どうもトランスジェンダーらしいのだ。化粧しているわけではなくスッピンモードだったのだが、眉を女性がするような柳眉にしていて、物腰もなんとなく女性的であった。この一行に、私たちの1人が声をかけた。
 やはりそうだった。東京・新宿でニューハーフをやっているとのこと。今回、2人連れの1人が性転換手術(※)をうけるためタイに行くというのだ。昨今は、ニューハーフ業界では、日本からタイに行き手術をしてくるケースがけっこうあるらしいので、この人もその1人ということになるだろう。
 機内食を食べたあと、しばし話をさせていただいた。
 手術後の様子をみるための日数も含めて、概ね1ケ月の滞在だという。バンコクだと、食費を含めての滞在費は日本に比べればかなり安いということもあり、こういう経済的背景も、タイでの性転換手術のために渡航する人たちを増加させているのかもしれない。
(※)医学用語では性別適合手術という

 現地時刻で夕方4時頃、バンコク国際空港に降り立った。
 パスポートの写真(男モード)と実際の私の姿が大きく異なっているため、入国審査は緊張する。しかしこれも杞憂だった。日本での出国、そして、帰国のときの再入国と同様に、あっけらかんとした感じの審査で拍子抜けしたほどだった。
 翌日は、早朝の航空便で、バンコクから1時間20分ほどかかる地方都市トランに行くことになっている。そこで働くトランスジェンダーに会うためだ。飛行機で1時間20分というと、だいたい、東京−札幌の距離ぐらいだろうか。トランはタイの南部、マレー半島の中部に位置し、観光地プーケットから100キロぐらいのところにある、ごくごくありふれた小さな地方都市である。バンコク市内に宿泊すると朝がたいへんであるため、空港と直結しているエアポートホテルに泊まることになった。
 なかなかすてきな部屋である。ビジネスホテルあたりにしか泊まったことがない身にすると、かなり豪華に思われた。しかし、宿泊金額は、日本の同クラスのホテルに比べればかなり安い。こういうところにも、日本とタイとの経済格差を感じるのだった。
 ホテルのレストランで、秘書の女性、そして、この秘書の妹さんたちと一緒に食事をすることになった。初めて顔を合わせてのレセプションというところだろうか。ホテルのレストランであるため、タイとしては高いのだろうが、日本に比べれば、料理はかなり安い金額だ。
 秘書の方もきれいなのだが、妹さんがまた美人である(写真、右から2人目が妹さん、写真、左が秘書の方)。30歳を超えているというのだが、全くそうは見えない。お2人ともとてもスリムである。そういえば、その後も、タイ女性で太った方はあまり見なかった。気候や食事が関係するのか、それともタイ女性の体質なのか。すてきな女性が多いのにはいささか驚いた。
 きれいでスリムというだけがタイ女性ではない。秘書の妹さんも、社会の第一線でバリバリ働くキャリアウーマン。そして、チーフの役割を担っているという。しかしとてもそうは見えない。スリムできれいなかわいらしい姿に、実は、私自身が「あるべき姿」にとらわれていたのだと思わされた。
 女性も、第一線でバリバリ働いている姿を見てとることができたタイでの初日だった。

(このシリーズ、続きます)