留美子が書いた小説

作 宮崎留美子



No.1
 

 ニューハーフバーのアルバイトでのひとコマ
  ※体験をもとにしていますが、一応はフィクションと思って読んでください


【1枚目の写真】【2枚目の写真】・・・私の若い頃の当時の写真
【3枚目の写真】・・・この写真はずっと後になって撮ったもので、当時の写真ではありません.イメージとして見てください

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 ところは札幌、すすきの。「ゴールデンK」というニューハーフバーがありました。今のように、札幌が200万都市になるずっと前のことです。今や、札幌のニューハーフのお店には、若くてきれいなホステスさんも多いですが、当時は、ニューハーフ界としては場末のエリア、きれいな子は東京・六本木などのお店に集まっています。私はというと、当時は、札幌にある某大学の学生で、アルバイトホステスとしてこのお店に入ったのです。スタッフは、ベテランニューハーフではあるものの、場末に流れてきたという感じで年配の方が中心でした。ですから、20歳ごろの私は、ずば抜けて若いということになります。
 ニューハーフホステスの衣装は、だいたいは【1枚目の写真】のようにロングドレスでゴージャスな感じです。ショーがあったり軽妙洒脱な会話があったりと、お客さんを日常とはちがう夢の世界へいざなうわけですから、ニューハーフホステスはきれいに着飾ってお客さんの相手をするのです。
 私はというと、はじめのころは、【1枚目の写真】のようなゴージャスなドレスの持ちあわせがなかったことと、当時、トップアイドルだったキャンディーズみたいな感じになりたいとの気持ちがあって、【2枚目の写真】のような超ミニのスタイルでお店にでていました。ゴージャスなドレスではないけれど、これはこれでお客さんの気をひくものです。私がたち歩くと、座っているお客さんの視線からは、たぶんパンチラになっていたのでは? 男の人ってパンチラは好きなんですねえ。自分の横に座るように言われることもけっこうありました。
 横に座り、水割りをつくってあげたりして、まずは天候がどうだとかいうようなとりとめのない会話から始まります。そうそう、当時の水割り用のウイスキーというと、ほとんどがダルマとよばれていたサントリーのオールドでした。
 とりとめのない会話から、ちょっとばっかり艶っぽい会話に変わっていくと、ここはまだ20歳ぐらいの清純派を醸すような「女の子」ですから、「やあーだあ、エッチ」「そんなこと知らないわ」とか、男性の艶話をうまくかわすのも、このころの私のテクニックでした。今、そんなことを言うと、カマトトぶっているといわれそうですが、当時はそれも許される年ごろだったのです。
 艶っぽい会話もすすんできて、そうすると、男性はだいたい決まったように、ミニスカートからすらりと出ている私の太ももに手をのせてくるのです。イメージとしては【3枚目の写真・・当時の写真ではありません】  エッチの意図ではないかのごとく自然をよそおって手をのせてくるんですね。ホントに最初の頃は、なんなくそうなったと思ったときもありましたが、すぐに電車内の痴漢のことが蘇ってきて、決して「自然に」なんかではなくて意図をもって触ってきているんだとわかるようになりました。だって、電車内の痴漢って、電車の揺れのせいで脚やお尻に手が触れたという自然をよそおうことから始まるのが多いのだもの。
 男の人の手は、少しずつ、でもほとんどわからない程度に上に這ってきます。こういったときの男の人の心の中は、けっこうドキドキしているんですね。ずっと後になって、そういうことをする男性の気持ちを聞いたことがあるのです。最初に触る一歩に逡巡するとか。『触って怒られないかなあ、でも触りたい』と思うそうです。これを読んでいる男性の方、どうでしょうか。そのとおりでしょうか。それとも、どうということはなく触り出すということなのか。ホステス相手でもいくらかの逡巡があるみたいですから、まして、電車内で痴漢を始めるときの男性の心理は『リスクはある、でも触りたい』という気持ちで揺れているのかもしれませんね。・・・ごめんなさい。私にはよくわからないことなのです。お前も体はオトコじゃないか、と言われそうですが、私は、これまでの人生で女性を触ったりしたことは1回もないのです。すべてが触られる側でしたから、「触ろう」というときの男性の心理はリアルにはわかりません。逡巡して、でも「触りたい」という気持ちに勝てなくて触り出す。でも、最初は自然を装う。男性の心理ってかわいいですね。
 男性の手が上にあがってきて、もうすぐでパンティに触れるかどうかというあたりになると、私も反応します。
「エッチー、もうそこまでよ」と男性の手に私の手を添えて、私の太ももから離します。そうすると、ここで、もうそれ以上には進まない方もいますが、多くはそこでは引き下がりません。
「キミが魅力的だから触りたくなったんだよ」
「すてきだ、キミを見ているとたまらなくなる」 20歳頃の私は、男性の口説き文句がこうやって出ていくのだということを知ることになりました。
ときには、
「パンストが好きなんだ。触り心地がいい」という人も。  ・・・あとになって知ることになったのですが、パンストが好きというのも2種類あって、(1)パンストが好きというよりは太ももを触りたいという人、(2)パンストフェチの人 といるみたいです。パンストフェチの男性は面白いです。さすがにニューハーフバーの店内ではないですが、2人だけの空間になると、私のパンストの脚を下から上へ、上から下へとなで回し愛撫し、ときには、つま先を口に含み、喜悦の声さえ上げる人もいました。アソコはこれでもかというぐらいに屹立していて、右手で私の脚を触りながら、左手ではその人のアソコをしごきだすのです。しばらくすると、ティッシュを引き抜いてアソコにかぶせ、快楽の頂点に達したような顔つきで、ドクドクとティッシュにはき出していきました。
 引き下がらずに、また、ゆっくりと触りだしてくる男性は、けっこう多かったです。私も、1回目よりももう少し許します。パンティに男性の指か触れてくるようになると、
「いやーーん」と声を出して体をよじります。ボックス席ですから、私と2人だけの空間になるとはいえ、個室ではなくてオープン席ですから、「いやーーん」声が大きいと他の人に恥ずかしいです。男性の耳元で「いやーーん」・・・
 男性が3回目のチャレンジをしてくると、パンティの上から触ってくるのをある程度は許します。「・・・あっ、・・・あん」耳元でささやくように声を上げました。
 何人かに1人ぐらいは、他のお客に見られないようにテーブルの下で、私の手を握って、男性のアソコに導く人もいました。そういう男性はもちろん硬く屹立しています。「屹立」を誇示したいのでしょうね。男性って面白いねえ。
 しかし、なってったって、ここはオープンの場。だいたいはそれぐらいで終わりになることがほとんどでした。男と「女」のラブゲーム。こういうのが「大人の遊び」なのかなあと学んでいった20歳頃の私でした。

 でも、あとあとがけっこうたいへんでした。お店のママさんは何も言いませんでしたが、同僚のニューハーフホステスの人からは、「留美子は踊りも会話もできないのに、色仕掛けで売っている」と非難されたものだったのです。超ミニのパンチラで男を誘い、ニューハーフの軽妙洒脱な会話ではなくショーの踊りといった「芸」ではなく、色気で男の気を引いていると思われたのでしょう。実際の私としては、そんなことまでは考えていなかったのですが(なんてったって20歳ぐらいの無垢な?ニューハーフだったのですから)、今となって思うと、色仕掛けで気を引いたと思われてもしかたがないかもしれませんね。